2012年9月18日火曜日

ツールド北海道2012その1


ツールド北海道2012が終了しました。結果は総合で2位、ステージ2で小集団スプリントから2位。優勝はニッポのリケーゼ選手。

今回の話はhttp://cyclist.sanspo.com/20761 に対する異論という意味合いも強いので、合わせて読んでください。ロードレースは単純じゃない。

まず、今年のレースはチームのパワーバランスがひずみすぎて、展開が特殊でした。スタートリストを眺めた瞬間に、きちんと力関係をはかっていけば、ニッポが勝つことが明々白々。純粋な力関係でいえば、そこまで断言できるレベル差がありました。ニッポは今回3名の外国人選手を入れてきました。バリアーニ選手、リケーゼ選手、カンパニャーロ選手。日本人は佐野選手と内間選手です。

率直にいって、同じ登り系の選手としてバリアーニ選手の力は僕や増田さん、譲さん、都貴さんなど国内一線で登る選手と比べても3枚ぐらい力が違う。TOJと熊野でみせつけられた力は度肝を抜かれるもので、ツアー・アルザスで一緒に走ったEndura Racingのジョナサン・ティエラン・ロック(今年プロツアーがひしめき合うツアー・オブ・ブリテンで総合優勝。来年チームスカイ)と比べても、まだバリアーニ選手の方が強い。これは、同じレースでギリギリの線を攻めて走らないとわからないことだと思います。

リケーゼ選手も、強豪ひしめくヨーロッパ・ツアーで確実に着にからむ実力者。第2・3ステージの登りで攻撃をしかけてわかったことは、ヨーロッパで戦えるスプリンターがいかに強力な登坂力をもっているか。国内の他のチームで、彼に中程度の距離までの登りで戦えるのは、おそらく先に上げた数人のエース級選手だけ。カンパニャーロ選手、佐野選手、内間選手もイタリアの厳しいレースをこなし続けているつわものたちです。これらの距離感ははたから見ていても、多分わからない。

他チームは戦略でこの差を埋めて勝利を考えなくてはならない。一緒に同じように勝負どころに加わっているのでは、確実に、圧倒的に負けることがわかっている。それを真っ向勝負するのは、ロードレースではない。実力だけ知りたいなら、それぞれ得意な地形でTTでもやればいい。

ここからは主に第2ステージの話。

このパワーバランスで900mアップの十勝岳を含み、その後もアップダウンの激しい第2ステージを迎えるわけです。レース展開はシマノレーシングライブとか、ブリッツェンライブを見てもらうとして、最初に発生した11人の逃げにニッポが1人しか乗せられなかったというのは、前提とされる実力差を考えると完全にニッポを崩すために近い方法。まともに集団で十勝までいった場合、バリアーニ選手・佐野選手の登坂で簡単に他を突き崩せるし、枚数さえ揃えていればリケーゼ選手で勝負できるニッポを唯一揺さぶる方法です。カンパニャーロ選手さえ攻略できれば勝てるのですから。壁が一番薄いところに偶然手が届いたわけで。

メンバーを見ても、譲さん、ハミルトン選手(ジェリーベリー)、マーティン選手(OCBC)、山本選手(鹿屋)、和郎さん(ブリヂストン)は各チームのエースかサブエース。シマノは当然このまま勝負したいし、ジェリーベリーは2人乗せていて絶好の展開。我々、ブリヂストンチームも練習の段階で僕らは和郎さんの調子がかなり良いのをよく知っていたし、カンパニャーロ選手と和郎さんが去年戦っていた距離感からも、落ち着いて戦えば勝ち目が十分以上にあることを知っていた。

これが中盤僕らのチームが追走に入らなかった理由です。

以上は簡単にわかるんですが、残るチームが本当に逃げメンバーで勝負したかったのかどうかは知りません。でも、正直牽引に入っただけで崩壊するチームが大多数だったと思います。あの11人の逃げはニッポじゃないと潰せなかったでしょう。それぐらいには強力だった。

結局あの時、一番焦るのはニッポだったわけです。しかもニッポは今回カンパニャーロ選手のコンディションが前で登り勝負できるほどよくないことを知っていたと思われます。登りが始まってからすぐに和郎さんが単独で強力な逃げを開始。他チームを置き去りにしていき、ブリヂストンとしてはますます状況が良くなり、次を待ち構えるのみ。

バリアーニ選手はいきなり和郎さんへのジャンプアップなどではなく(本人にその気があれば、一瞬でできたはずです)、リケーゼ選手込みで登ることを選択。ここで追加攻撃でリケーゼ選手を落とすことを狙うオプションは確かにあったんですが、十勝岳は案外勾配がゆるい坂で(だからこそ、それなりに集団が大きなままで残った)、後ろについていれば、それなりに楽=バリアーニ選手が余分に足を使ってくれている状況。同時にリケーゼ選手を落とすことは困難。さらに、ここでニッポの枚数を減らすことが出来れば、最後の丘で十分に勝負できるというのが、試走から得た情報による感想でした。そしてあのペースから意味のある追加攻撃ができる人間は多分2人しかいなくて、2人では意味が無い。

この日の和郎さんの攻撃は本当に強力で、十勝岳後のアップダウンを佐野選手とバリアーニ選手が猛烈に牽引してもなかなか差がつまらないほど。ようやく捕まる頃には、そのプロトンのペースの速さのあまり、選手が20人ほどしか残らないほど。。。

そして最後の丘を迎えました。この時点で確実に総合を狙う方法は2つ、
1.丘での攻撃による小集団ゴールを狙う
2.大集団で隼人によるスプリントを狙う

バリアーニ選手と佐野選手が、最後の丘でそれほど足がないのに気づいた瞬間、位置取りをしていた伊丹と僕が攻撃にいき、1.が選択されました。(<-これにも色々と議論が巻き起こりましたが。。。)

が、ここでリケーゼ選手がこの逃げに入ったところが良くない形。やはりこの程度のアタックでは彼を振りちぎれなかった。僕らのミスです。このままでは小集団スプリントを奪われてしまうことが濃厚。

この時、天秤にかかったのは
1.このままいく。
唯一登り系の選手で第1ステージ結果からボーナスタイムを持っている譲さんからリードを奪えるため、勝てないまでも、この集団で最後まで行く。一緒に逃げに入った増田選手と飯野選手なら、スプリントでこちらも負けていない。リケーゼ選手にボーナスタイムで負ける分は翌日の第3ステージが200キロと長いため、平坦基調のコースとはいえ、5人でコントロールしきるのは難しい。波状攻撃で奪えるはず。。。

2.完全につきいちで集団に戻す。
やっぱりリケーゼ選手にボーナスタイムを取らせるのは危険。完全につきいちで隼人によるゴールスプリント勝負に託す。

伊丹との協議の結果は1.このままいく。

6人で後ろのとの距離をはかりながら、最後までたどりつき、最後は伊丹に先行してもらいながら全力でゴールスプリントをとりににいきましたが、やはりリケーゼ選手に敗れ2位。

厳しい10秒差を負ってしまいました。第3ステージに続く。