典型的なノルマンディーの曇天の下、走りだす。
7月というのに気温は20度を下回り、エルブフはうっすらと肌寒い。明日、我々ブリヂストン・アンカーチームは、ベルギー国境付近で行われる、本格的なパヴェを含む、まっ平らな周回レースを控えている。和郎さん、都貴さん、伊丹はこれまでの長いヨーロッパの経験からパヴェのレースもいくつか体験して、その厳しさを一つ一つ具体的に語ってくれる。位置取りを失敗すると、セクターを超える頃にはぶっちぎれているとか、その後の平坦でこそペースが上がるので、オールアウトしていると終わりだとか、ブラケットですらろくすっぽ激しい振動のために握ることは難しく、上ハンをしっかりと握って、重いギヤを回さないといけないといった、参考になる情報だ。
しかし、どれだけ話を聞いたところで、目で見て、走ったものにしかわからない情報というものがあることは、よくわかっている。とにかく飛び込んでみるしかない
一昨日に本格的なトレーニングを終え、昨日今日と身体の疲労を抜きながら、適度に刺激を与えるだけのトレーニングに入っているため、きついメニューを控えた日のような、気の重さはないが、どの程度身体が動くかどうかがそれぞれ気になる。
いつもの坂を越える。普段と比べて出力は自然に出ているか?筋肉はこれから訪れる激しい苦痛を受け入れる準備ができているのか?コーナーでタイヤのグリップを十分に感じることができるだろうか?
普段通り過ぎるカフェに立ち寄って、セーヌ川の風景を眺めながらコーヒー。ひとしきり語らいの後、帰る。
アパートにたどり着いた途端に降りだした雨に幸運を感じる。願わくばここで運を使い果たしていませんように...