一昨日に「ワールドツアーの中のレース(グランツール、etc.)を除くと最もハードなんじゃないか」(byチームメイトのクリス・バトラー談)といわれるジロ・デル・トレンティーノを完走しました。4日とさほど長い日程でもないながら、2日が山頂ゴール、残りの2日もきつい山岳を含むレースで、クライマーたちがジロの調整に利用するレースです。
photo by Cyclowired
チームとしては、徐剛(Xu Gun)の第1ステージ敢闘賞&8位、第2ステージでグレゴーのエスケープ、そしてクリスが総合18位(バッソやペリゾッティらよりも前)で終えることができ、一定の存在感を示すことができたと思います。地味ですが。。。
僕のハイライトとしては、第3ステージ、序盤から凄まじくペースが上がった最初の2級山岳で、いきなり50人ほどにプロトンが絞り込まれた際に生き残り、クリスのアシストをきっちり続けられたこと。チャンピオンシステムで先頭集団に生き残ったのはクリスと僕の2人だけで、ボトル&食料をチームカーから配給、位置取りの風よけなどをうまく単独でこなして、クリスを最後まで先頭集団に残すことに成功。クリスが単独になって、中盤力を使い果たしてゴールまで残れないという最悪の事態は避ける事ができました。
photo by Cyclowired
第4ステージでも、ゴール40キロ手前の2級山岳のペースアップに耐え抜き、最後の超級山岳までうまくクリスを送り届けました。しかしうちのエースはあのダンシングでよく登るよな(ひとりごと)。最初の山頂ゴールでクラックして自分のリザルトは追求できませんでしたが、クリスで総合勝負というチーム課題のなかではよく役割を果たせました。地味にね。
とまあこのへんが一般的な選手としてのリザルトですが、自分の中でまた未開の地(Terra incognita)にまた脚を踏み入れることができたなと実感しています。
もちろん初めてハイクラスのステージレースを完走したという、自分の中での一歩もあるのですが、最近常々自分が他の選手と異なるアプローチでロードレースに取り組んできたがために、何をやってもひとつの探検であるという感を強くしているから。
日本で選手の育成や枠組みづくりを行なっている人たちからは、どうやったらヨーロッパツアーでよく走ることができる選手の頭数を増やすことができるか、議論が続いています。日本のロードレースはロードレースではなく、できるだけ避けて早くヨーロッパに渡って活動すべきだとか、反対に日本でのプロリーグを充実させて、Jリーグのような体系を目指すべきだとか、意見は多くあります。
そういう中で、自分はロードレースの本質を真剣に見極めようとしてきた人たちと、一つ一つ課題をクリアしてきました。前回ブラバンツ・ペイユの時も、今回のトレンティーノの時も、「おい、正気ではないきつさだが、これ練習でやってきたことと一緒だぞ!だからいけるな!」という確信。
やや穏やかなプロトンでリラックスできるときに、ふと考えることがあります。「この中で19でまともにロードレースを始め、エンジニアリングを学び、ヨーロッパの豊富なレース環境に全く触れずに23までトレーニングをして、フルタイムでレースをするようになって2年とちょっとで走っている選手がいるだろうか?多分いないな」
やっていること全てがチャレンジであり、提案になっています。
そうして、自分なりのチャレンジをしていることを実感するとそれが次のモチベーションとなります。また、多かれ少なかれ選手はひとりひとり違うので、それぞれのチャレンジをリスペクトする気持ちが湧いてきます。
何事も思考停止にならないこと、
批評するよりも、提案して批評される側の方がマシであること、
以上レースを通して雑感でした。