2012年6月7日木曜日

ツール・ド・熊野


ツール・ド・熊野が終了。3日ともタフな展開が続いた。過去の実績からいうと、熊野は毎回雨というのが相場だったが、今年は幸運なことに、全日晴れ渡り、天気にふさわしいスピードレースが続いた。去年の大洪水の爪痕が残る熊野地方でレースが今年も開催されたことにまずは感謝したい。

ツアー・オブ・ジャパンと結構なメンバーがかぶっているので、気持ち的にはその続きのレース。TOJで圧倒的な力をみせつけたチームニッポをみながらレースせざるをえない。プロローグを極めて平々凡々に終えて、かなり後方のチームカー隊列を獲得した我々は(ひとえに総合優勝のため、スピードのないオールラウンダーで今回のチームは構成された)、平坦基調の第1ステージも同じぐらい低いモチベーションで臨むことになった。

しょっぱなからニッポはがっちりとコントロールを構え、逃げも容易に差を開かせない。最初の2周ぐらいだけ、リーダーチームのジェネシスがコントロールしようとしたが、「どけ、お前ら」といわんばかりにガンガンコントロールを開始。しかも、平坦基調ながら一箇所ある登りは非常に狭く、勾配もあるため、選手のトラブルを誘う。しばしば落車や中切れをすり抜けながら、ぼちぼちレースを進める。中盤に都貴さんがチェーンを落としてしまい、後退。すぐさま適切な処置があればどうということもないトラブルのはずだったが、大きく禍根を残し、なおかつ非常に足を使うことになってしまったらしい。そもそも都貴さんじゃなかったら帰って来てないな。

ゴール勝負は都貴さんのスプリントが唯一のオプションだったため、上記のトラブルがあったこの日は何もせず。

全てが決まる第2ステージ。千枚田~札立峠、そして今年は小森峠が追加された国内屈指の山岳ステージとなる。昨年は札立からニッポのバリアーニ選手とチャベス選手(チャベス選手は今年ジロでステージ優勝しましたね)に独走されて歯が立たず。圧倒的な力を背景に、今年もバリアーニ選手・アレドンド選手で同じ事をやってくることは確実。これを防ぐために、トマ・都貴さんを除く選手で、「前待ち」作戦を決行した。

「前待ち」作戦とは、山岳で厳しい戦いが想定されている場合、エース級の選手より先にアタックでつくりだした先行集団にてオーバーペース覚悟でレースを進め、いざ勝負どころでエースが追いついてきた時に全力で助力するという作戦。昨年のツールの第18ステージでシュレックをリーダーとするレパード・トレックがモンフォールを逃してやった作戦と同じやつです。

スタートから全開で逃げを試みるが、なかなか逃げが決まらず。厳しいコースなので、早めに逃げたい選手も多いのだが、ニッポも下手に数を出すと後々面倒なことになるのがわかっているので、慎重に逃げを選んでいる。そのために多少アシストの佐野選手や内間選手の足を削ることになっても、簡単に逃げを出してくれない。上り下りを繰り返し、延々とアタック合戦が続いて、集団に疲労が見え始めたころに「そろそろ決まるな」、と直感し、誰が行っているのか見えにくいトンネル内でアタックすることで、単独抜け出すことに成功。

単独はきついなあ、と気が重かったが、今月は全日本個人タイムトライアルも控えているので、めげずに個人TTを開始する。エアロだエアロ。1人逃げなので集団は完全に休むかと思ったが、そうでもないらしく、ジリジリとしかタイムギャップを開くことができず。それでもリズムよく最初の千枚田、ダウンヒルを超え、問題の札立峠へ2分弱の差で突入する。

ここで後ろのペースが猛烈に上がることがわかっていたが、先行しているものの特権として、焦らずペースで、しかし緩めずに確実なテンポで登っていく。半分ほどいったところでバリアーニ選手とアレドンド選手が速いペースでパスしていくが、かなり疲れてはいる様子。これじゃ下は地獄絵図だな、と思いつつも、これ以上ペースが上げられないので、テンポを守る。頂上付近までずーっと見えていたものの、先行されてしまった。そして頂上まで1kmというところでトマが追いついてきて、合流。ダウンヒルに入った。ダウンヒルをこなして、平坦区間に入ったところで都貴さんと増田さんが合流して4人に。前二人を追撃するには十分といえる。自分は特に後を考えなくてもいいので、とにかく次の峠まではということで、ここぞとばかりにどんどん牽引。

今年新たに追加された峠、小森峠の中腹で、更にテンポを上げてきたトマのペースについていくことができず、今回の目標だった仕事を終了して(足が終了して)3人を見送る。その後追いついてきた佐野選手とぽちぽち回していたら、メイン集団に吸収されて最後の千枚田まではこれに乗る。千枚田では案の定というか、アタックが頻発してついていくことができず、ここから遅れて平坦をぽつぽつと1人で走っていたら、ゴール前5キロぐらいでグルペットがやってきて、これと一緒にゴール。結果は残念ながら前の2人を捕まえることができず、トマが最後の千枚田で抜け出して3位を確定させ、都貴さんが増田さんの後ろでゴールとのことだった。最初描いた絵のとおりにレースを進め、各々持てる力のほぼベストを出した上だったので、ニッポの2人に脱帽するしかない。

最終の第3ステージは、トマの総合3位をきっちり確定させ、ゴール勝負あるのみ。ニッポと利害が一致するので、ほぼ全面で協力体制をしいて、ゴールまで。前日出し切ったのが効いていたのか、全然走れなかった。完走したのみ。

TOJではスプリントでチームとしての形が作れたのが大きな収穫でしたが、熊野では第2ステージ山岳で攻めの姿勢を示すことができたのが収穫かな。

次は全日本TTです。